『月の街 山の街』を読んで
2015年 06月 25日
(ソウル最後の貧民街、プッチョンマウルの路地裏です)
Road Story 「路地裏」の一節を聴きながら、『月の街 山の街』という本を思い出しました。
SMAPの草彅剛さんが翻訳したことで話題になった本です。買ったまま積読本になってるのを探し出して読んでみました。
달동네(貧民街)を文字通り訳すと、月の街(町内)。
산 언덕에다가 그대로 지은 집들이라서 그런지(山の丘陵にそのまま建てられた家々だからか)
골목골목이 마치 뭐라고 그럴까,(路地路地がまるでなんといえばよいのか)
롤러코스터 같은데요.(ジェットコースターのようです)
原作は、『연탄길(ヨンタンギル/練炭道)』。
子どもの頃、「月の街」「山の街」で暮らしていた作者のイ・チョルファン(이철환)さんによると、雪が積もると、練炭の灰を坂道で滑らないようにみんなで敷きつめたそうです。
それは雪よりも白い愛でした。貧しさに沈んでいる「月の街」「山の街」の人たちが、翌朝、胸を張って坂道を下りていけるように。
私が子どもの頃も、練炭は冬の必需品でした。練炭を燃やした火鉢で暖をとったり、カルメラを焼いたり。もっとも、この作品のように、冬と雪が同義語のような環境ではありませんでしたが、韓国にしても、日本にしても、時の流れは止めようがありません。
前の記事のインタビューでナムギルさんが語っています。
その道を歩いていた数多くの人々の物語を忘れないでほしい。
本質的であることだけは変わらないようにしてほしい。
長い間、その場所を守って暮らしている人たちの姿と情は変わらないでほしい。
この本に登場する人々は、まさに、そういう人たちでしょう。私自身の子どもの頃を思い出させる人物に心が痛み、ふと、亡き母のことを考えたり。私を含め、子どもを持たない人は世の中にいても、親のない人はいません。どんな親であろうと、早く別れようと、それだけで、すごく心が温まる真実のように思えます。
読みやすい日本語に翻訳されているので、一気読み。あとがきで、「僕の韓国語の師匠である根本理恵先生にはいろいろとご助言いただき… 」と書いてあるように、根本さんが翻訳監修を務めてられるので、安心して読める気がします(笑)。本のカバーも挿絵も素敵です。