「えんぴつで奥の細道」
2006年 05月 30日
文字の上をなぞるというのではないが、私も20代の頃、好きな作家の文章を原稿用紙に書き写すという作業を1年ほど続けたことがある。好きな作家は何人かいるが、誰か一人を挙げよを言われるなら、私は迷いなく、「立原正秋」と答えるだろう。初めて立原作品を読んだとき、私の求めていた文章はこれだと思った。潔い文章がそのまま作者自身を思わせるようで、ある時期、立原作品は生きがいのようになっていた。
またまたおめでたい性根を顕にするのは恥ずかしいが、私は立原さんの文章を書き写すことでその息遣いを会得したいと思った。若気の至りというか、恐れを知らぬ所業であったと思う。もちろん、書き写したからといって、何かを得ることは出来なかったが、何も考えず、原稿用紙を一字一字埋めて行く作業は実に楽しかった。一つの作品を完成するたび、不思議な達成感が得られたものだ。
「えんぴつで奥の細道」が売れている理由のひとつもその辺にあるのではないだろうか。最近の私はパソコン入力に慣れすぎてしまい、たまに手紙や葉書を書くと、妙に緊張して字は踊っているし、簡単な漢字すら出てこない。「えんぴつで奥の細道」はともかく、好きな作品や文章を「書き写す」という愚直な、しかし、充実感を手軽に味わえる行為を再開するのもよいかも知れない。
ご存知のとおり、私も在職中は世相に疎い人間でした。まあ、知ったからと言って、ほんでどやねん、とも言えますけどね。
「国家の品格」は、いろいろな方が書評を書いていると思いますけど、一読する価値はあると思います。
おまさぼうさんは翻訳をされているんですか。昔から外国語のできる人と楽器の演奏ができる人を無条件で尊敬する性質なんです。
翻訳をやっているというより、勉強を始めたばかりです。授業は面白いのですが、赤ペンいっぱいで返ってくる課題を見るたび、勉強と才能の不足を実感します。いつまで続くやら?
楽器にもあこがれて、フルートを3年ほどやりましたが、やはり、これも三日坊主、今では手の位置も忘れてしまいました。ああ!