『サメ~愛の黙示録~』 20話 (最終話)

最終話は、ハン・イスの死と共に終わってしまいました。イス自身、被害者であり、加害者でもありました。仕合せな結末は期待できなくて当然ですが、イスが望んでいたように生きて償わせるという選択もあったはずです。しかし、巨悪だけを生かして、ドラマは終わってしまいました。

19話の感想で、<パク女史とヨシムラ会長の役割もいまいちはっきりしないままに終わってしまうような感もあります>と書きましたが、きちんと彼らの役割が描かれていました。

パク女史は、ピストルで自決しようとするチョ会長を見事にブロックしてくれました。また、ジャイアントホテルソウルの代表がイスであったとしても、ヨシムラ会長の養子になっていなければ、父が生涯悔やんでやまなかった過去の償いをあのような形で実現させることは困難だったでしょう。

「わたしを脅迫するのか?」と訊くヨシムラ会長に対するイスの悪い顔、キム・ナムギルの魅力の一端がよく表れていました。

チェ・ビョンギは、表立ってチョ会長を裏切ることはなかったですが、彼なりのけじめをつけて行きました。

ずっと父の庇護のもとに生きてきたチョ社長でしたが、亡き母の写真を胸に泣きじゃくる姿は、母を恋しながら充たされなかった彼の半生を物語るようでした。それはそうと、12年前に出て行ったチョ社長の妻、つまり、ヘウ母はその後の音沙汰もなく終わってしまいました。

キム・ジュンの秘書、チャン・ヨンヒと運転手のキム・ドンスは、孤独なイスを癒してくれる存在であり、裏切りがあったとしても、彼が信じることのできる存在でした。昏睡状態のイスを前に泣き続けるドンスに胸が詰まる思いがしました。

キム・スヒョンは、最終話の冒頭で、どんでん返しを演じてくれました。お気に入りのシーンです。父たちの因縁と復讐という感情を乗り越えたイスとスヒョンは、二人の新しい未来を予感させてくれるものです。

そのスヒョンはチョン・マンチョル殺害に加担しています。イスは自分ひとりでやったこととイヒョン養父のビョン刑事に語っています。大岡越前的裁きであれば、スヒョンの罪を見逃してもいいかなという気はします。しかし、それでいいのでしょうか。料簡の狭い私は、スヒョンにも犯した過ちは償ってほしいと感じます。

イス妹のイヒョンと彼女の育ての両親は、このドラマのなかでは希望です。イスは妹のなかで生き続けますし、この家族はこれからも温かい人生を送っていくでしょう。

ヘウ夫のオ・ジュニョンは、イスへの嫉妬や怒りを乗り越えて、ヘウを見守り、ホテルを再生させようとする道を選びました。

チョ会長は最後まで権力と保身のためには他人の命など歯牙にもかけない人物でした。好々爺としていたイ・ジョンギルさんの表情が最後には怪物のように変貌していました。イスとの対立は見応えがありました。素晴らしい演技だった思います。

ヘウは非常に辛い立場にいました。誰よりも尊敬していた祖父が過去に犯した大罪は容易に受け止められなかったはずです。そして、敵対する相手が死んだと思っていたイスですから、彼女の葛藤は私の想像をはるかに超えるものです。また、夫ジュニョンとイスの間でも揺れる想いが交錯したことでしょう。しかし、そのあたりの描写、表現が十分でなかったように思います。

そして、ハン・イス。一度は、チョ会長によって死の淵へ追い込まれたイスでした。しかし、ヨシムラ会長に救われた命は、12年の時を経てこの世に舞い戻ってきたのです。妹の命をつなぎ、父の罪を償い、ヘウに別れを告げて行きました。最後は孤独なキム・ジュンではなく、ヘウや友人たちに見守られながらの最後だったのが救いと思うしかありません。
『サメ~愛の黙示録~』 20話 (最終話)_f0020564_1356164.jpg
伽耶ホテルの創立記念パーティでのキム・ナムギルのスーツ姿。最高です!

主要な役を演じた俳優さんたちの名前と写真がエンディングでクレジットされていました。パク・チャノン監督とキム・ジウ作家にとって、三部作の集大成ということもあるのか、縁の俳優さんたちです。それぞれの登場人物に目配りをした終わり方がいいですね。

ドラマ『サメ』についての記事は、とりあえず、これでおしまいです。今後は、気にかかる台詞や書き残したことなどがあれば、取り上げていきたいと思います。拙い記事をお読みいただき、ありがとうございました。

20話のあらすじは前半後半に分かれています。

<写真は、KBS『サメ』HPからお借りしました>
Commented by ぷりん at 2014-03-15 15:19 x
昨日発売の雑誌は、「サメ」についてふれている内容のインタビューでした。
この作品は、多々思うこと・考えることがあったので、ナム自身はどう思って演じていたのかな?と思っていたので、噛みしめながら(立ち読み笑)熟読してきました^_^;

黒の館では「サメ」にもふれるかな。。。

赤黒とはちがった意味で、腑に府に落ちない点もあり、心にモヤモヤ感が残るドラマでした。。。
おまさぼう様の感想・ご意見、「そうそう」と納得&賛同しながら読ませていただきました。

ドラマの内容はさて置き(←失礼しました)、ナムの演技は素晴らしかったと思います!!
ペン以外の方の感想の中に「あの演技力を生かし、次のドラマ・違うジャンルでのドラマで会えることを期待したい」と書かれているのを読みました(^O^) 嬉しいですよね◎
終わったばかりで横浜イベも楽しみですが、私も次のドラマで早く会いたい、俳優姿を見たいです!!
Commented by おまさぼう at 2014-03-15 17:33 x
ぷりんさま
雑誌は、昨日、書店で写真だけ見てきました。眼が悪くて立ち読みが辛い!
記事はさっき雑誌が届いたので、やっと読みました。『サメ』の演技についてあれこれ語っているのを聞くのは初めてですよね。最近は雑誌を買うのは節約してましたけど、これは読み応えがありました。
本人も復讐ものはしばらくしないと言っていますし、私の好きな刑事ドラマでソル・ギョングさん当たり役のカン・チョルジュンみたいなハチャメチャ刑事役を演じてほしいです。
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by omasa-beu | 2014-03-15 14:03 | サメ(サンオ)~愛の黙示録~ | Comments(2)

終活しなくちゃと思いながら毎日をだらしなく送っている団塊の世代です。写真は、ドラマ『子連れ狼』(北大路欣也さん版)の大五郎(小林翼さん)。私の癒しです。スカパー「時代劇専門チャンネル」のTV画面から撮影。問題でしたらお知らせください。


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