花形トーク 七代目市川染五郎の情熱

8月8日、阪急うめだホール(阪急百貨店うめだ本店9階)で開催された市川染五郎さんのトークショーを見物。400人ほど入るホールはほぼ満席という盛況。開演の1時間前に到着した頃には、すでに長い列ができていた。自由の身となった今(笑)、平日の午後に、こういう催しに参加できるのが嬉しい。司会は、NHKで古典芸能といえばこの人という葛西 聖司アナウンサー。もっとも、葛西アナは、NHKを退職され、今はフリーで活躍されているようだ。在職中、この方がニュースを担当しているのを見ると、結構、おかしな感じがしたことを思い出す。

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舞台の両脇には、10月に東京国立劇場で上演される狂言のポスター。右手が一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)、左手が春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)


染五郎さんは、葛西アナの紹介により、客席後方左手のドアから登場。濃いグレイのスーツに薄いグレイのシャツ、ネクタイは薄紫という上品な装い。「暑いですねえ」という挨拶から始まった。私は、前から5列目左手の席にすわっていたが、こんなに近いのに、すでに染ちゃんの顔がぼやけているという哀しさ。何かの事件の目撃者になっても、おそらく役には立たないだろう。とはいえ、最初、舞台の上手にすわっていた染ちゃんと、トークの途中で席を変わるなど、観客への配慮を示してくれた葛西さんのお陰で、正面と横顔を見せてもらえた。

舞台奥のスクリーンには、染五郎さんの近著『染五郎の超訳的歌舞伎』の中から、今までに演じた役柄の写真が映し出される。最初が、表紙にも使われている、碁盤忠信に扮した折の絢爛豪華な、まさに、これぞ歌舞伎という1枚。葛西さんから、「お若い頃は、こんな隅どりをするような役はされないように思っていた」と言われていたが、たしかに、全体に線が細かったイメージが私にもある。

2枚目の写真(同じく、忠信の違う衣装だったか?)を見た葛西アナ、「お父さんの幸四郎さんよりも、吉右衛門さんに似てますね」と。真偽のほどはわからないが、お父さんの幸四郎さんと叔父さんの吉右衛門さんは仲が悪いという噂が定着しているせいか、染ちゃんに叔父さんの話を引き出してくれる機会はそう多くはないように感じられる。「おじさんのことは、どう呼んでいるのですか?」「おじ・・ですかね」「(吉右衛門さんは)染五郎さんのことを?」「あーちゃん(染ちゃんの身内での呼び名)、きみ、染五郎、ですね」。こんな、ちょっとした話がファンには嬉しい。

ネタ帳というか、いつもメモを持ち歩いていたという染ちゃん。頭のなかは、どうすれば面白い芝居をできるのかと考え続け、それを実現させてきたことが伺いしれる。その数ある中のひとつが、2012年2月、大阪松竹座で上演された『大當り伏見の富くじ』。なんと、松竹座開業以来の観客動員記録を打ち立てたというから、さぞや嬉しかったことだろう。たしかに、たくさん笑わせてもらった。

また、女形が嫌いだった染ちゃんだが、15歳の前後、2年間かけて、女形の大演目『春興鏡獅子』のお稽古をつみ、たった1日の公演に臨んだという話。そのお陰で、後年、私たちは、『怪談敷島譚』での女形を楽しませてもらえたのかも知れない。

次々とスクリーンに映し出される写真から話を引き出す葛西アナの司会はさすがである。家元を務める踊りの松本流の公演、衣装へのこだわり、上方歌舞伎への想い、あるいは、お子さんたちの話から、テーブルの上に置かれているドリンクが水やお茶ではなく、オレンジジュースというのはめずらしいですねと、終始、リラックスムードで語られた。染ちゃん、歌舞伎以外のことには、葛西アナが振る話題にも全く興味を示さないというわかりやすさ。

そして、ファンなら誰しも知りたいと思っている勧進帳の弁慶については、本公演でいつでも演じられる用意があるようだ。頭のなかでのシミュレーションはすでに2000回を越えているとのこと(笑)。富樫を演じる役者さん待ちのような印象を受けた。

今回のトークで寂しく感じたのは、今年4月以来、新しくなった歌舞伎座でのお芝居を私自身が観ていないことだ。話を聞いているだけでも、楽しいことは楽しいけれど、やはり、お芝居は観てなんぼのもの。9月の歌舞伎座、10月の国立劇場での公演についての意気ごみを聞きながら、キリギリス人生を送ってきた者の末路としては、関西へのお出ましを待つほかはないと密かにため息。

トークは、「これからもやり続けてゆくし、やりたいことを形にしてゆく」という力強い言葉で結ばれた。最後は、染ちゃんが好きな加藤茶さんの「ぺっ」で挨拶。そして、再び、会場に降り、私の横手を退場してゆく染五郎さんを見送りながら、若い頃に較べると、すっかり身体に厚みが増していることに年月を感じてしまった。

葛西さんによると、横からご覧になっていた染ちゃんの鼻がりっぱだったとか。役者としては素晴らしいことに思える。

予定の1時間半が、文字通り、あっという間に過ぎたトークの内容をすべて書くことはできないが、仕合わせな夏のひとときを過ごさせてもらえた。

帰り、染ちゃんのサイン入り、限定70冊という『染五郎の超訳的歌舞伎』を購入。巻末に掲載されている染五郎さんと市川猿之助さんの対談が嬉しい。本屋で見つけ、後日、買おうと思っていただけに思いがけないおみやげとなった。

また、この日は、BSプレミアムで放送されるドキュメンタリーのカメラが染ちゃんを追いかけていた。放送は、9月18日22時の予定。
Commented by ひとみ at 2013-08-11 21:35 x
染五郎さんの鼻が立派なのは、私もそう思います。 
お富さんの中で切られ与三を演じられた時、手ぬぐいをかぶって木戸口に足を組んで座っていた時の横顔、、、!!
美しかったこと、美しかったこと!!
絵のようでしたよ。
Commented by おまさぼう at 2013-08-11 22:44 x
ひとみさま

わたしも、与三、観ました。わたしは、どちらかというと、若旦那の頃のなよなよ与三が結構ツボです^^

愛之助さんと演じられた『染模様恩愛御書』の話で、BLのお相手、つまりラブリンが、今、半沢直樹でそういう役をやってられますけど~なんて、葛西さんがおっしゃったりして。半沢、面白く観てますけど、歌舞伎役者さんの底力はすごいです。話はいっぱい聞きましたけど、書ききれないし、本文中にも書いたように、歌舞伎座が開業して以来の作品については、ついてゆけないのが悔しいです。
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by omasa-beu | 2013-08-09 18:09 | かぶき・演劇 | Comments(2)

♪♪Kim Nam Gil Forever♪♪ 韓国の俳優キム・ナムギルさんが好きです☆


by omasa-beu
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