松竹座二月大歌舞伎
2015年 02月 18日
そんななかですが、大阪道頓堀の松竹座夜の部観劇を楽しんできました。今月は、一月から引き続き、中村翫雀さん改め、四代目中村鴈治郎さんの襲名興行が開催されています。
一番目は、鴈治郎さんがお父上の坂田藤十郎さんと演じる『曽根崎心中』。19歳の遊女お初を演じる藤十郎さんは御年83歳ながら、とても愛らしく、動きもシャープ。ほんとに驚嘆ものです。近松門左衛門作のこのお芝居、時々、心にかかる台詞がありましたが、今、思い出そうとすると、どこかに消え去っているボケボケの私です。梅田のお初天神の名前の由来は、お初と徳兵衛が天神さん森で心中したことからそう呼ばれるようになったようです。昔は、あのあたりも森だったんですね。
中幕は、鴈治郎さんが息子さんの中村壱太郎(かずたろう)さんと踊る『連獅子』。壱太郎さんは、ふだんは、女形が多い役者さんですが、子獅子の舞の躍動感に見惚れてしまいました。時折、袴の裾からちらちらと見える股引朱色が眼を引き、歌舞伎の色彩感覚に感嘆。一方、鴈治郎さんは子を見守る親獅子らしく、どっしりと構えた踊りでしたが、獅子の精に変身してからの毛振りでは、息子に負けまいとする気合いが感じられる競演に観客からの拍手喝采が鳴りやまず、拍手するこちらの手の方が気振りが終わる前に痛くなるほどでした。また、狂言師が獅子の精に着替えをする合間に出てくる二人の僧が市川猿之助さんと尾上松緑さんという豪華版も楽しめました。
最後の幕が、市川猿之助さんの『義経千本桜 川連法眼館の場』。通称、『四の切』と呼ばれる狂言。もう何度でも観たいお芝居です。静御前の役は前の幕で子獅子を演じた壱太郎さん。従来、かわいいと感じることが多かったのですが、この日の静はきれいでした。今回、3階最前列での見物でしたので、3階客席に近づいてくる猿之助さんの表情もアップで観ているようです。大向こうからのかけ声や大きな声援に紛れ、「おもだかや~」と数回、叫んでしまいました(笑)。幕切れ、劇場内に舞い落ちる花びらの華やかさ。
自分自身が不甲斐ないせいか、内向きの考えになりがちな昨今の私ですが、生の舞台から受ける感動で心が満たされた夜でした。