シネマ歌舞伎『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』
2014年 07月 06日
葛西さんは、元NHKのアナウンサー。お話が上手いのは当然としても、見かけと違い、結構、ベタなユーモアのある方で、すごく楽しい45分の解説をお聞きした後、ナンバシネマパークスへ移動し、映画鑑賞。
「歌舞伎は結論を知って観ると面白い」という葛西さんのお話に、内心、うなづく。舞台セットや小道具も含め、伏線を知ってから観る楽しみ方ということかと思うが、それは、いつも、韓国ドラマを観るときにやっていることだ。もっとも、私の場合、大抵のドラマは、いらいらする前半のフラストレーションがいやで、先に結末を知ってから観るという反則的観方をついしてしまう癖があるのだ。
本作は、5年前の6月、建て替え前の歌舞伎座で上演された。仁左衛門さんが「一世一代」でつとめた作品ということだ。つまり、仁左衛門さんの与兵衛というドラ息子役はもう見られないということなのだ。
放蕩息子が最後には人殺しをするという悲惨な話だが、現代の事件にも通じていて、さすがに、近松門左衛門の作品は、時代や国を超えた普遍性を感じさせる。
人殺しは無残なテーマに違いないが、本作にしても、『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』にしても、その殺しの場をいかに残酷に、しかし、美しく見せるかが歌舞伎の本領だろう。罪もない顔なじみのお内儀を殺した後の仁左衛門さんの眼差しに宿る狂気にはぞくっとさせられた。
シネマ歌舞伎が好きなのは、役者さんの表情や舞台装置がはっきりとわかることだ。歌舞伎料金に較べ、お手軽なのも嬉しい。そして、65歳の仁左衛門さんも観られれば、一昨年、惜しくも亡くなった中村勘三郎さんにも会える。
1時間50分もの作品が短く感じられたのは、葛西さんから、作品の背景を詳しく教えてもらったおかげだと思う。
シネマ歌舞伎は観る値打ちがあります。
시네마가부키는 볼 만한 가치가 있다.
シネマカブキヌン ポル マナン カチガ イッタ。
Cinema Kabuki is worth seeing.