大阪平成中村座
2010年 10月 10日
「平成中村座」を観るのは、2002年大阪扇町公園での公演以来だから、実に8年ぶりである。思い返せば、2002年は私が正社員としての職を失った年である。あれからの日をなんとか生き延びて来れたのが、芝居とは関係なしに胸に沁みてくる。
夜の部は『俊寛』、『太閤桜』、『弁天娘女男白浪』の3本。
『俊寛』は中村勘三郎さん。私が何度も観ているのはご贔屓、中村吉右衛門さんの俊寛であるが、演じる役者さんにより、島流しにあって孤島に独り残された俊寛の心情が違って見えるのが面白い。勘三郎さんからは諦念のようなものが感じられた。ただ、正直、あまり好きな芝居ではない。
『太閤桜』は観たことがない狂言と思っていたら、本公演のための新作だった。醍醐の花見に興じる秀吉とねね、淀など。そこに今は亡き明智光秀が現れ、秀吉と語らう幻想的な舞踊劇。中村七之助さんの淀に眼を引かれる。人をたやすく寄せつけない気位の高さ、品のよさなど、すばらしい淀君である。この一幕には平成中村座でなくては見られない趣向がこらされており、夜の部ならではのあっと驚くお楽しみがある。
最後の『弁天娘女男白浪』は、「知らざあ言って聞かせやしょう」というたんかで有名な弁天小僧のお芝居に「白波五人男」が勢ぞろいしての台詞が楽しいお芝居である。ここでも、七之助さん扮する弁天小僧の姿、声、台詞まわしなどにすっかりファンになってしまった。
平成中村座は江戸時代の芝居小屋を再現しているので、最前列から10列目までが平場になっていて、たたみの上にすわって観劇する。今回、雰囲気を味わいたくて初めて経験してみたが、前の女性が175センチはあろうかという長身のせいか、眼の前に壁が立塞がるようで、お芝居に集中できなかった。それだけが残念な今回の観劇だった。